経営戦略とマーケティング戦略の違いとは|目的や、立案方法、成功に導くフレームワークを解説
マーケティング

目次
現代のビジネス界で生き残るためには、経営戦略とマーケティング戦略は切っても切れない存在です。この2つの戦略がうまくかみ合うことで、企業は競争の激しい市場で勝ち抜き、持続的な成長を実現できるのです。この記事では、これらの経営戦略と基本的な概念や、マーケティング戦略のフレームワークなどをわかりやすく解説します。
経営戦略とマーケティング戦略の定義と違い
経営戦略とは、企業が掲げるビジョンや経営目的を達成するための計画や方策を指す言葉です。
簡単に言うと、会社全体がどこを目指し、どのように市場で勝負していくのか大きな方向性を定める、いわば「企業の未来図を描くための地図」のようなものです。
マーケティング戦略とは、市場や顧客を分析しニーズを理解して、自社の商品やサービスのアプローチを考えることを言います。
つまり、「経営戦略を達成するための具体的な行動計画」です。地図を見て目的地を決めた後、実際にその場所へ行くためのルートや交通手段を選ぶようなものです。
上記でも説明した通り、経営戦略とマーケティング戦略は、よく混同されがちですが、それぞれに意味や、目的、手法が異なります。
経営戦略とマーケティング戦略のそれぞれの違いを詳しくみていきましょう。
区分 | 経営戦略 | マーケティング戦略 |
---|---|---|
目的 | 企業全体の長期的な方向性を設定する | 特定の市場で顧客ニーズに応えるための具体的な戦術を策定する |
視点 | 企業全体 | 市場と顧客 |
期間 | 長期 | 短期 |
内容 | 目標設定、資源配分 | 商品開発、プロモーション |
対象 | 企業全体 | 特定の市場セグメント、顧客 |
主な要素 | ミッション、ビジョン、目標設定、資源配分、リスク管理 | 製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion) |
例 | 企業の多角化戦略、新規市場参入戦略、財務戦略 | 商品発売キャンペーン、ターゲティング広告、価格プロモーション |
成功の要因 | 組織全体の一体感、リーダーシップ、企業文化 | 消費者ニーズの正確な把握、市場の動向分析、効果的な広告施策 |
経営戦略とマーケティング戦略の重要性
経営戦略とマーケティング戦略は、連携が必要不可欠です。
経営戦略とマーケティング戦略を適切に連携させることのメリットとしては、
- 効率的な成長
- 持続的な競争優位性がある
- 顧客満足度の向上
などがあります。
限られた経営資源のヒト、モノ、カネ、情報を最も効果的に活用し、組織全体が目指すべき方向性を定める経営戦略は、市場の変動に迅速に対応しなければならず、柔軟な組織体制と効率的な意思決定プロセスが求められます。一方、マーケティング戦略は、顧客のニーズを的確に捉え、競合との差別化を図ることで、市場における競争優位性を確立します。
それぞれ役割があり、連携することで、経営資源の最適化、市場への迅速な対応、顧客満足度の向上、そして最終的には企業全体の成長につながります。
成長を加速させる経営戦略手法
経営戦略の種類:企業の成長を支える3つのレベル
企業が成功するためには、様々なレベルで戦略を立てて実行していく必要があります。経営戦略は、大きく分けて以下の3つのレベルに分類されます。
1. コーポレート戦略(企業全体戦略)
企業全体の大まかな方向性を決める戦略です。
例: 新規事業への参入、既存事業からの撤退、海外展開など
目的: 企業のミッションやビジョンを実現するために、どの事業に注力し、どのように成長していくのかを決定します。
担当者: 経営者やトップマネジメント
2. ビジネスユニット戦略(事業部門戦略)
各事業部門が、自社の強みを活かして競争優位を築くための戦略です。
例: 新製品の開発、既存製品の改良、新たな顧客層へのアプローチなど
目的: 各事業部門が、コーポレート戦略に沿って、それぞれの市場で成功するための具体的な戦略を立てます。
担当者: 事業部門のマネージャーやリーダー
3. 機能別戦略(機能戦略)
各機能(マーケティング、財務、人事など)が、事業戦略をサポートするための戦略です。
例: 新商品のプロモーション活動、コスト削減、人材育成など
目的: 各機能が、事業戦略を実現するために必要な具体的な施策を立案します。
担当者: 各機能の専門家
コーポレート戦略、ビジネスユニット戦略、機能別戦略という3つのレベルを理解し、それぞれの戦略が連携することで、企業は持続的な成長を実現できるのです。
経営戦略を立てる際の4つのプロセス
1. 市場と競合の分析
まず、企業を取り巻く環境を徹底的に分析します。市場のトレンド、競合企業の動向、顧客のニーズなどを詳しく調べ、自社が置かれている状況を正確に把握します。
2. 自社の強みと弱みの分析
次に、自社の内部環境を分析し、強みと弱みを明確にします。強みは、競合他社との差別化につながる要素であり、弱みは改善すべき点です。
3. 戦略の選択肢の検討
分析結果に基づき、複数の戦略選択肢を検討します。それぞれの選択肢のメリットとデメリットを比較し、企業にとって最適な戦略を選びましょう。
4. 具体的な行動計画の策定
最適な戦略が決まったら、具体的な行動計画を立てます。目標を設定し、達成するための具体的な施策、担当者、期限などを明確にします。
▼経営戦略を立てる際は以下のポイントを押さえておきましょう。
- 顧客のニーズを深く理解する
- 革新的な製品やサービスを提供する
- 新たなビジネスモデルを創出する
- 市場の変化に対応する
- 既存のビジネスモデルに固執しない
- 柔軟な戦略変更を行う
経営戦略を立てる際のフレームワーク
SWOT分析
SWOT分析は、企業が自社の内部環境と外部環境を分析し、現状を客観的に把握するためのフレームワークです。
- 強み(Strengths):自社が競合他社に対して優位に立っている点、例えば、独自技術、ブランド力、優秀な人材など。
- 弱み(Weaknesses):自社の競争力を低下させる可能性のある点、例えば、資金不足、製品の品質低下、市場シェアの低下など。
- 機会(Opportunities):外部環境の変化によって生まれる成長のチャンス、例えば、新市場の開拓、新しい技術の導入、規制緩和など。
- 脅威(Threats):外部環境の変化によって生じるリスク、例えば、競合他社の参入、経済状況の悪化、自然災害など。
SWOT分析を行うことで、企業は自社の強みを最大限に活かし、弱みを克服しながら、新たな機会を捉え、脅威から身を守るための戦略を立案することができます。
シナリオプランニング
シナリオプランニングは、将来の不確実性を考慮し、複数のシナリオを構築することで、企業が将来起こりうる様々な状況に対応するための戦略を立てる手法です。
- 最適シナリオ:最も望ましい未来の状況
- 悲観シナリオ:最悪の状況
- 中立シナリオ:現状が大きく変化しない状況
など、複数のシナリオを想定し、それぞれのシナリオに対する対応策を事前に検討することで、企業は不確実な未来に対して柔軟に対応することができます。
ポートフォリオ分析
ポートフォリオ分析は、企業が複数の事業を保有している場合に、それぞれの事業の収益性や成長性などを評価し、リソースを最適に配分するための手法です。
代表的なポートフォリオ分析のフレームワークとして、BCGマトリックスがあります。
BCGマトリックスとは、「The Boston Consulting Group」が発案したフレームワークで、企業の長期的な戦略を計画する際に広く使われています。これをもとに、製品を見直し、グロースのチャンスを見極めることで製品の撤退や開発をすすめることができます。
BCGマトリックスは、事業を市場成長率と相対的な市場シェアの2つの軸で分類し、以下の4つの象限に分けます。
- 花形:高成長・高シェアの事業。投資を継続し、さらなる成長を目指すべき。
- 金のなる木:低成長・高シェアの事業。安定的な収益をもたらすため、収益を他の事業に投資する。
- 問題児:高成長・低シェアの事業。将来の成長が期待できるが、投資が必要。
- 負け犬:低成長・低シェアの事業。撤退または改善が必要。
【▼イメージ画像】
ポートフォリオ分析を行うことで、企業はどの事業に重点を置くべきか、どの事業から撤退すべきかなどを判断し、資源配分を最適化することができます。
これらの手法を組み合わせることで、企業はより深く自社の現状を理解し、将来の成長に向けて最適な戦略を立案することができます。
競争優位を確立するためマーケティング戦略手法
マーケティング戦略とは、企業が市場で競争優位を確立し、顧客価値を高めるための計画的な取り組みです。それは単に商品やサービスを売ることだけでなく、顧客との長期的な関係を築くことを目的としています。
本セクションでは、マーケティング戦略を立てる際のフレームワークについて触れていきます。
マーケティング戦略を立てる際のフレームワーク
3C分析
3C分析とは、「Customer(顧客)」、「Competitor(競合)」、「Company(自社)」の3つの要素を分析し、差別化ポイントや、自社の置かれている状況を客観的に把握するための手法です。
- Customer(顧客)
顧客のニーズや要望は何か? - 顧客の属性(年齢、性別、職業など)は?
- 顧客の購買行動は?
- 顧客の満足度は?
Competitor(競合)
- 競合の強み・弱みは?
- 競合の製品・サービスの特徴は?
- 競合のマーケティング戦略は?
- 競合のシェアは?
Company(自社)
- 自社の強み・弱みは?
- 自社の製品・サービスの特徴は?
- 自社のマーケティング戦略は?
- 自社のシェアは?
4P分析
Product(製品)
- どんな商品やサービスを売るのか?
- 商品の特徴や強みは?
- 顧客のニーズに合っているか?
Price(価格)
- いくらで売るのか?
- 競合他社の価格と比較してどうなのか?
- 顧客が喜んで支払う価格か?
Place(場所)
- どこで売るのか?
- どんな販売チャネルを使うのか?
- 顧客が買いやすい場所か?
Promotion(プロモーション)
- どのように宣伝するのか?
- 広告、SNS、イベントなど、どんな手段を使うのか?
- 顧客にどうアピールするのか?
STP分析
- Segmentation(市場の細分化)
- Targeting(ターゲット市場の選定)
- Positioning(市場における自社の立ち位置の明確化)
上記の頭文字を取ったもので、市場を細かくセグメント化し、特定のターゲット層を選定し、そのターゲット市場でどのようなポジショニングを取るかを決定する手法です。
例)化粧品会社が、10代の若者をターゲットに、トレンドに敏感で価格を抑えた化粧品を発売する場合、STP分析を活用しています。
4C分析
- Customer(顧客)
- Cost(コスト)
- Convenience(利便性)
- Communication(コミュニケーション)
上記の4つの視点からマーケティング戦略を立案します。
この手法では顧客のニーズを最優先に考え、顧客が負担するコストを適切に設定し、商品の利便性を高め、効果的なコミュニケーションを図ることが重視されます。
例)オンラインショッピングサイトが、手軽に買い物を楽しめるようなサイトデザインにし、様々な決済方法に対応し、顧客からの問い合わせに迅速に対応することで、顧客満足度を高める場合、4C分析を活用します。
マーケティング戦略の種類を適切に選ぶことで、ターゲット市場に対してより効果的なアプローチが可能になります。
各戦略を立てるメリットとデメリット
経営戦略とマーケティング戦略にはそれぞれ独自のメリットとデメリットがあります。理由はその特性や実行環境によって結果が異なるためであり、それぞれの効果やリスクを理解することが重要です。
経営戦略
メリット
- 長期的な視点からの経営: 短期的な利益だけでなく、企業の持続的な成長を視野に入れた計画を立てられる。
- 資源の最適配分: 限られた資源を最も効果的に活用し、無駄を削減できる。
- 組織全体の目標の一致: 全員が同じ方向に向かって努力できるため、効率性が向上する。
デメリット
- 策定に時間がかかる: 多岐にわたる情報を分析し、意思決定を行うため、時間がかかる。
- 外部環境の変化に対応しにくい: 一度策定した戦略は、外部環境の変化によって、すぐに陳腐化してしまう可能性がある。
- 実行が難しい: 策定した戦略を実行に移すためには、組織全体の協力が必要であり、スムーズに進まない場合もある。
マーケティング戦略
メリット
- 顧客との関係構築: 顧客のニーズを把握し、製品やサービスを改善することで、顧客満足度を高められる。
- 競合との差別化: 競合他社との差別化を図り、自社の強みをアピールできる。
- 売上向上: 効果的なマーケティング活動により、売上を向上させることができる。
デメリット
- 短期的な効果に偏りがち: 短期的な売上向上にばかり目がいきがちで、長期的な視点が欠けてしまう場合がある。
- 費用がかかる: 広告宣伝費など、マーケティング活動には費用がかかる。
- 効果測定が難しい: マーケティング活動の効果を正確に測定することが難しい場合がある。
まとめ
本記事では、経営戦略とマーケティング戦略の重要性とそれらの違いについて説明してきました。
経営戦略とマーケティング戦略は、企業の成長を加速させるための強力なツールです。
経営戦略とマーケティング戦略を効果的に活用するためのポイントをまとめると以下です。
- 両者の役割を明確にする
- 連携を強化する
- 市場や顧客のニーズに常に目を向ける
- データに基づいた意思決定を行う
- 自社の強みを活かす
- 競合との差別化を図る
- 顧客視点を持つ
- 長期的な視点を持つ
これらのポイントを踏まえ、自社の成長戦略を立てていきましょう。