マーケティングに効果的な行動心理学25の法則|人の深層心理にアプローチする活用方法

マーケティング

マーケティングでは、ただ商品やサービスを提供するだけでなく、消費者の心理的な動機や欲求を理解することが成功の鍵となります。

本記事では、行動心理学の基本知識と心理マーケティングの視点からその具体的な活用方法について詳しく解説します。

心理マーケティングの基礎知識

行動心理学とは

行動心理学とは、人間の行動を科学的に研究する心理学の一分野です。

わかりやすくいうと、人が普段何気なくしている行動の裏側にある理由を、科学的に研究する学問であり、人々の選択や行動の背後にある法則やパターンを研究している学問です。

消費者の購買行動を左右する3つの心理メカニズム

ではなぜ、人は同じ商品でも、ある人は購入し、ある人は購入しないのでしょうか?

その答えは、人それぞれが持つ「心理」にあります。 

消費者の購買行動を左右する深層心理は「動機」「欲求」「感情」に分けることができます。

1. 消費行動の原動力となる「動機」は、大きく以下の4つに分類できます。

生理的動機:食欲、睡眠欲など、生きるために必要な欲求
安全欲求:心身ともに安全で安定した状態を保ちたいという欲求
社会的欲求: 他者との関係性の中で認められたい、所属したいという欲求
自己実現欲求: 自己の能力を最大限に発揮し、自己成長をしたいという欲求

2. 動機が行動の「なぜ」なら、欲求は「何を」です。

消費者は、様々な欲求を満たすために商品やサービスを購入します。

所有欲: 物を所有したいという欲求
承認欲求: 周囲から認められたいという欲求
変化欲求:新しいものを求める欲求
快適な生活を求める欲求:より快適な生活を送りたいという欲求

3. 消費者の購買行動に大きく左右される「感情」です。

喜び: 購入することで喜びを感じたい
安心: 安心できる商品を選びたい
ワクワク: 新しい発見や体験を求めている
寂しさ: 孤独感を解消したい

購買決定までの5つのプロセスと具体的な施策

どの段階でアプローチすれば最大の効果が得られるかを知るためには、消費者が商品やサービスを選ぶ際の一連のステップを理解することが重要です。

消費者が商品やサービスを購入する際、以下のステップを踏むでしょう。

問題認識→情報収集→複数の商品やサービスを比較検討→購買決定→購買後の行動

また、購買決定プロセスモデルとして代表的なものが、「AIDMA理論」というもの。

1920年代アメリカのビジネス著作家であるサミュエル・ローランド・ホール氏が、消費者が商品やサービスを知ってから購入に至るまでには以下の 5 つのステップを踏む心理プロセスとしてはじめて提唱しました。

AIDMA理論とは

AIDMA は、以下 5 つの段階の頭文字を取ったビジネス用語です。

  • Attention (注意)
  • Interest (関心)
  • Desire (欲求)
  • Memory (記憶)
  • Action (行動)

1. 問題認識段階

問題認識段階では、消費者の潜在的なニーズを喚起し、問題意識を持たせましょう。

ポイント:

  • 消費者の悩みや不満に「共感」できるようなメッセージを発信する。
  • 「具体的な事例」や体験談を提示し、共感を深める。
  • 消費者に「問いかける」ことで、自らの問題に気づかせる。

2. 情報収集段階

 情報収集段階では、消費者が求める情報を提供し、自社の製品・サービスが最適解であることをアピールしましょう。

ポイント:

  •  検索エンジンで上位表示されるように、キーワード選定やコンテンツ作成を行うなどSEO対策を行う
  • ブログ記事、動画、SNSなど、様々な形式で有益な情報を提供する。
  • 競合製品との比較情報を提供し、自社の優位性を示す。

3. 代替品評価段階

競合製品との差別化を図り、自社の製品・サービスの優位性をアピールしましょう。

ポイント:

  • 他の製品にはない独自の価値(USP)を明確にする。
  • 商品のデモ動画や体験イベントを開催する。
  • 無料サンプルを提供し、実際に試してもらう機会を作る。

4. 購買決定段階

この段階では、購入を後押しし、購買行動に繋げましょう。

ポイント:

  • 限定品、期間限定など、限定性や希少性をアピールする。
  • 購入期限などを設定し、緊急性購買意欲を煽る。
  • 保証制度や返品交換対応などを明記し、安心感を与える。

5. 購買後の行動段階

購買後は、顧客満足度を高め、リピーター化を促進させましょう。

ポイント:

  • 購入後のサポート体制を強化し、アフターフォローをする
  • 顧客同士が交流できるコミュニティを形成する。
  • 口コミサイトへの投稿を促したり、紹介してもらう

▼各段階におけるマーケティング施策の例

段階 具体的な施策
問題認識 アンケート調査、インタビュー、SNSでのアンケート
情報収集 SEO対策、コンテンツマーケティング、比較サイトへの掲載
代替品評価 デモイベント、無料サンプル提供、比較表の作成
購買決定 クーポン配布、ポイント還元、期間限定セール
購買後行動 お客様の声掲載、アフターサービス、ロイヤルティプログラム

 

マーケティングに効果が期待できる行動心理学25選

心理学とマーケティングは、関係ないと思われがちですが、消費者の行動は、単なる合理的な判断だけでなく、感情や心理的な要因に大きく左右されます。

「期間限定」や「数量限定」などのテクニックも「今すぐ行動しなければ」といった購買意欲を高める心理マーケティングです。

どういった心理でどういった効果があるのか25の心理学をご紹介しますので、営業や自社でで活用できるものがあるか是非最後までご覧ください。

1. ハロー効果
ある特徴が好印象だと、他の特徴も良く見えてしまう効果。
例:有名なブランドの商品であれば、品質も高いと連想されやすい。

2. ホーン効果
ある特徴が嫌な印象だと、他の特徴も悪く見えてしまう効果。逆ハロー効果とも呼ばれる。
例:商品のデザインが気に入らなければ、機能性も低いと判断されやすい。

3. バンドワゴン効果
大勢の人が支持しているから自分もそうしようとする心理。
例:人気のある商品を買いたがる心理。

4. 社会的証明
多くの人が利用している、支持しているという事実が、その選択の正当性を高める心理。
例:口コミサイトの評価が高い商品を選ぶ。

5. 権威への服従
専門家や権威者の意見を信頼し、従ってしまう心理。
例:医師が推奨するサプリメントを購入する。

6. 損失回避の法則
人は損失を回避することに強いこだわりを持つ心理。
例:無料体験後、サービスを解約すると損をしたように感じる。

7. アンカリング効果
最初に提示された情報が、その後の判断に大きな影響を与える効果。
例:高額な商品を先に提示し、その後安価な商品を提示することで、安価な商品が割安に感じられる。

8.フレーミング効果
同じ情報でも、伝え方によって受け止め方が変わる効果。
例:「90%の成功率」と「10%の失敗率」では前者の方が好意的に受け取られやすい。

9. カリギュラ効果
禁止されると、かえってやりたくなる心理。
例:限定品や数量限定という言葉に惹かれる。

10. 希少性の原理
数量が限られている、手に入りにくいという状況が、価値を高める心理。
例:プレミアがつく商品に魅力を感じる。

11.ディドロ効果 
新しいものを手に入れると、それに合わせて他のものも欲しくなる心理。
例:新しい洋服を買ったら、それに合うバッグも欲しくなる。

12.一貫性の原理
 一度決めたことを実行に移そうとする心理。
例:一度決めた目標を達成しようとする。

13. フット・イン・ザ・ドアテクニック
小さな要求から始めて、徐々に大きな要求に応えてもらうテクニック。
例:まずは無料サンプルを提供し、その後商品を購入してもらう。

14. ドア・イン・ザ・フェイステクニック
まず大きな要求をしてから、それを拒否された後に小さな要求をするテクニック。
例:高額なプランを提案し、断られた後に低額なプランを提案する。

15. ローボール・テクニック
最初に受け入れやすいような好条件を出してから、承諾を得た後に「OK」をもらいたい条件を示すというテクニック。
例:契約直前に追加料金が発生することを伝える。

16. 返報性の原理
相手に何かしてもらったら、お返ししたいと思う心理。
例:サンプルをもらったら、その商品を買いたくなる。

17. ザイオンス効果(単純接触効果)
接触する機会が増えるほど好感が増すという現象。
例:何度も広告を見ることで、商品への好感度が高まる。

18. スノッブ効果
人とは違うものを求める心理。
例:限定品や高級品に魅力を感じる。

19. シャルパンティエ効果
「重さの感覚が視覚的に見える大きさの影響を受け、物理的な重さの等しい物でも、体積が小さい方が小さく感じられる現象」
例:商品のパッケージの大きさや形状を工夫することで、商品の価値や量を大きく見せたり、小さく見せたりすることができる。

20. ピグマリオン効果
他者の期待によって、その期待通りの結果になる効果。
例:上司から期待されていると感じると、より高いパフォーマンスを発揮する。

21. メラビアンの法則
人間のコミュニケーションにおいて、視覚情報が55%、聴覚情報が38%、言語情報が7%の影響力を持つという法則
例:初めて会った相手に対して、その人の外見や話し方から得た印象が、その後の関係性に大きく影響する。

22. バーナム効果
誰にでも当てはまるような曖昧で一般的な記述を、自分だけに当てはまるものだと信じてしまう心理現象
例:性格診断テストの結果は、非常に一般的な記述であることが多いですが、多くの人が自分のことをよく表していると感じる。

23. 松竹梅の法則(ゴルディロックス効果
3つの選択肢がある場合、真ん中のものを選びやすいという心理効果
例:プランなどでも高すぎず安すぎない中間金額を選んでしまう。

24. アンダードッグ効果
不利なチーム、弱い立場の人などに対して同情の心を抱き、つい応援してしまう心理現象
例:「今、研修で回っていまして…」とい言葉で、同情を買い、商品が売れるということがあります。

25.ジャムの法則
人は選択肢が多すぎるとどれを選べばよいかわからなくなり、判断を下すことを避ける傾向にある
例: 店頭にたくさんの商品が並んでいると、どれを選べば良いのか分からなくなり、結局何も買わずに店を出てしまう

消費者の購入決定の要因

消費者の購買行動は、単に商品の機能や価格だけでなく、様々な心理的な要因によって左右されます。本記事では、消費者の購入決定を左右する主な要因を、心理マーケティングの観点から深掘りしていきます。

消費者の購入決定を左右する4つの主な要因

1. 感情的な要因

  • 商品のデザイン、ブランドイメージ、使用感など、五感に訴えかける要素
  • 商品のストーリーやブランドの理念に共感する要素
  • 信頼できるブランドや、口コミで評判の良い商品

2. 社会的要因

  • 自分が属しているグループやコミュニティで支持されている商品を選ぶ所属意識
  • 周囲から認められたいという欲求である承認欲求
  • 流行に敏感な人は、最新のトレンド商品

3. 機能的な要因

  •  商品の性能や使いやすさ、価格など
  • 自分の抱えている問題を解決してくれる商品であるかどうか
  • 支払った価格に見合うだけの価値があるかどうか

4. 個人的な要因

  • 過去の購入経験や、口コミ情報など
  • 個人の価値観やライフスタイルに合っているかどうか
  • 年齢や性別など

色彩心理学と消費者行動

色彩心理学は、色が人間の心理に与える影響を研究する学問です。

例えば、赤色は興奮や情熱を、青色は冷静さや信頼感を、それぞれ連想させます。これらの色の持つイメージは、消費者の購買行動に大きく影響を与えるのです。

色が与える心理効果

  • 赤色: 興奮、情熱、食欲を刺激し、購買意欲を高める。
  • 青色: 冷静さ、信頼感を与える。高価な商品や高級感を演出するのに適している。
  • 緑色: 自然、癒し、安らぎを連想させる。環境意識の高い商品に合う。
  • 黄色: 楽しさ、明るさ、注意を引きつける。
  • オレンジ色: 活力、親しみやすさ、食欲を刺激する。

カラーマーケティングの事例

  • 飲食店: 赤色を基調とした内装で食欲を刺激し、回転率を高める。
  • 化粧品: ピンク色やパープル色を用いて、女性らしさや華やかさを表現する。
  • 金融機関: 青色を基調としたデザインで、信頼感と安定感を醸し出す。

カラーマーケティングの注意点

  • 文化的な違い: 色が持つ意味は文化によって異なるため、グローバル展開する際には注意が必要。
  • ターゲット層: 同じ色が、年齢や性別によって異なる印象を与える場合がある。
  • 商品の属性: 商品の属性に合わせて、適切な色を選ぶことが重要。

 

適切な色を選ぶことで、消費者の心を捉え、購買意欲を高めることができます。

ただし、色彩心理学は万能ではなく、他のマーケティング要素との組み合わせが重要です。

心理マーケティングの注意点と倫理的側面の考慮

心理マーケティングは、消費者に対する深い洞察を活用し、効果的な戦略を展開するための強力なツールですが、この方法を用いる際には倫理的な配慮も重要です。

本セクションでは、心理マーケティングに関連する注意点と倫理的側面を考慮する方法について解説します。

心理マーケティングを行う際には、消費者の信頼を守りつつ効果的な戦略を展開するための複数の重要なポイントがあります。

心理的操作に関する倫理的な問題

誤った心理的操作は消費者の信頼を損ね、ブランドに対する信頼を失う危険性があります。

過度な恐怖を煽る広告や、消費者の不安を利用する、また、虚偽情報を提供することで消費者を誤導する手法も倫理的に適切ではありません。

魅力的な心理マーケティングを行うためには、消費者の信頼を守りながら、透明で誠実な方法を選びましょう。

正確な情報提供やユーザーにとって価値のあるコンテンツを提供することで、消費者との信頼関係を築くことが重要です。また、消費者の意見やフィードバックを尊重し、定期的に情報を更新することも信頼性向上に繋がります。

個人情報やデータプライバシーの保護

顧客の信頼を維持し、法的リスクを回避するためには、データの取り扱いに細心の注意を払う必要があります。違反が発覚すると、企業の信用が失墜し、罰金などの罰則を受けることもあります。

例えば、EUのGDPR(一般データ保護規則)は、データ保護の厳格な基準を設けており、違反すると巨額の罰金が科されることがあります。FacebookやGoogleは、データプライバシーの問題で巨額の罰金を課された事例があります。

多様性への配慮

広告キャンペーンで異なる人種、性別、年齢、障害を持つ人々を積極的に起用することにより、多様性を尊重する企業としてのメッセージを発信できます。

これにより、多様な背景を持つ顧客が自らをブランドに重ね合わせやすくなり、その結果、親近感や信頼感が醸成されます。

多様性を尊重することで、顧客基盤を広げ、競争力を高めることができます。

まとめ

この記事では、25の行動心理学の法則を利用して、マーケティング戦略を成功に導く方法を解説してきました。

それを元にマーケティング戦略は、消費者の心理を理解した上で立てるのと立てないのでは効果が大きく変わってきます。

マーケターの方も心理学を勉強していただいて利益の最大化を目指しましょう。

 

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