インサイドセールスとは?導入のメリット・デメリットやポイントを解説
マーケティング

はじめに
近年、顧客獲得の手段として注目されているのが「インサイドセールス」です。言葉は聞いたことがあるものの、通常の営業活動とどう違うのかわからないという人は多いでしょう。
インサイドセールスをうまく取り入れられれば、営業活動の効率・効果が大きく向上する可能性があります。
本記事では、インサイドセールスとは何なのか、その概要とメリット・デメリット、導入時のポイントを解説します。
インサイドセールスをうまく活用したいとお考えの営業・マーケティング担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
インサイドセールスとは
インサイドセールスとは何なのか、まずは以下3つの観点で概要を紹介します。
- 日本語でいえば「内勤営業」
- インサイドセールスの役割
- インサイドセールスが注目されている背景
1.日本語で言えば「内勤営業」
インサイドセールスとは、日本語でいえば「内勤営業」、つまり外出せず自社のオフィスから営業をかける手法を指します。
従来の営業活動といえば、外出して客先を回る「フィールドセールス」のイメージが強いでしょう。
インサイドセールスでは、さまざまなコミュニケーション手段を使って遠隔で見込み客にアプローチし、その後の本格的な営業活動につなげます。
つまり、フィールドセールスを効果的・効率的に行なうため、事前に「顧客の絞り込み・育成」を実施するのがインサイドセールスの役割です。
ただし、昔からあるテレアポとは異なります。インサイドセールスでは、見込み客との関係づくりを目的として、多様なアプローチを行ないます。
テレアポでは電話が主なコミュニケーション手段になりますが、インサイドセールスでは電話・メール・SNS・オンライン会議など、多様な手段でアプローチを図るのが特徴です。
2.インサイドセールスの役割
インサイドセールスは、マーケティングと営業をつなぐ重要な役割を果たします。
商品・サービスの販売にあたっては、まずマーケティング部門が市場調査やターゲット選定を重ね、リードの獲得に着手するでしょう。
リード獲得の手段としては、セミナーやウェビナーの実施が挙げられます。潜在顧客にターゲットを絞り、自社の商品・サービスに関連するテーマのセミナー・ウェビナーに参加してもらうことで、有力な見込み客のリストを取得します。
インサイドセールスの役割は、マーケティング部門が獲得したリストのなかから、より有力な顧客を選定し、育成(ナーチャリング)することです。
先述の通り、電話だけでなくメールやオンライン会議などによるアプローチを繰り返し、関係性を築きます。
インサイドセールスによるアプローチの結果、訪問営業(フィールドセールス)の部門はより販売の見込みが高く、かつ育成(ナーチャリング)によって自社の商品・サービスに対する需要が高まっている見込み客への営業が可能となります。結果として、提案営業やクロージングの成功確率が大きく高まるのです。
3.インサイドセールスが注目されている背景
インサイドセールスが近年注目されている背景としては、人口減少に伴う人手不足・マーケットの縮小によって業界を問わず競争が激化している現状が挙げられます。
激しい競争を勝ち抜くため、営業活動も効率化が求められているのです。
また、新型コロナ感染症の対策として、訪問営業(フィールドセールス)の実施が困難になったという点も背景のひとつです。
単純に訪問営業の回数を減らしてしまえば、業績は下がる一方となります。社内にいながら営業活動を実施する手段として、インサイドセールスに注目する企業が増えたと考えられます。
インサイドセールスの種類
インサイドセールスの種類は、大きく分けて以下の2つです。
- SDR(反響型)
- BDR(新規開拓型)
それぞれの概要と具体的な活動内容を解説します。
1.SDR(反響型)
SDRはSales Development Representativeの略で、「反響型」のインサイドセールスとされています。
資料請求や電話での問い合わせなどの「反響」が見られた企業に対し、インサイドセールス部門がアプローチをかけます。
すでに自社の商品・サービスに興味がある見込み客であるため、その後の受注につながりやすい点がSDR(反響型)のメリットです。
一方、相手のアクションを待つ「プル型」という側面から、アプローチの対象が中小企業になるケースが多く、1件あたりのコストパフォーマンスが下がる点はデメリットといえます。
2.BDR(新規開拓型)
BRDはBusiness Development Representativeの略で、「新規開拓型」のインサイドセールスとされています。
プル型のSDRと異なり、BDRでは自ら潜在顧客に対してアプローチするプッシュ型の営業スタイルが特徴です。
潜在ニーズがあると見込まれる企業に対し、代表電話や広報資料に記載されているキーパーソン宛にコンタクトを取るといった手法が一般的です。
相手のニーズが顕在化していない状態であるため、1件あたりの成約率はSDR(プル型)よりも下がるでしょう。
しかし、待ちの姿勢ではリードの獲得が難しい大手企業などにも積極的にアプローチできる点がメリットです。対象が大手企業であるため、1件あたりの単価も高くなる傾向にあります。
インサイドセールスのメリット
インサイドセールスを導入するメリットとしては、以下の3点が挙げられます。
- 営業活動を効率化できる
- 営業範囲を拡大できる
- 個人に頼らない営業組織を構築できる
順番に見ていきましょう。
1.営業活動を効率化できる
インサイドセールスを導入することで、従来の営業活動(フィールドセールス)の効率が上がります。
もともと顧客を1件1件回って営業をかけていたところ、まずインサイドセールスで有力な見込み客に絞り、関係づくりを行なうことで、フィールドセールスによる成約率が向上するからです。
また、インサイドセールスでは非対面での定型的なやりとりが多いため、少人数のチームで多くの見込み客に対してアプローチできます。
客先訪問にかかる人手・時間を大幅に削減できるため、営業部門の運営コストも下げられるでしょう。
2.営業範囲を拡大できる
インサイドセールスでは電話やメール、SNS、オンラインでの打ち合わせなどをアプローチの手段に使うため、訪問営業よりもリーチできる範囲が広がります。
営業組織のキャパシティに限界があり、これまで接触を諦めていた見込み客に対しても、インサイドセールスなら十分アプローチできるでしょう。
3.個人に頼らない営業組織を構築できる
訪問営業をベースとしたフィールドセールスでは、個々の営業部員のスキルによって売上が左右されます。
優秀な人材を確保・維持できればよいですが、引き抜きなどによって個人が抜けた結果、企業としての営業力が落ちるという例も少なくありません。
インサイドセールスなら、一度組織・仕組みを作ってしまえば、個人のスキルに頼らない形で見込み顧客の絞り込み・育成が可能となります。
電話やメール、オンラインミーティングでのアプローチは定型化しやすいため、研修などによって組織全体のスキルを引き上げられます。
インサイドセールスのデメリット
一方、インサイドセールス導入のデメリットとしては以下の3点が挙げられます。
- 組織・仕組みを構築する必要がある
- 信頼関係の構築に時間がかかる
- 商品・サービスの魅力が伝わりにくい
順番に見ていきましょう。
1.組織・仕組みを構築する必要がある
インサイドセールスを効果的に行なうためには、従来のフィールドセールスとはまったく異なる組織・仕組みが必要となります。
具体的には、以下のようなポイントを整理することが大切です。
- インサイドセールスのチームがどこからどこまでを担当するのか
- マーケティング部門とどのように連携するのか
- フィールドセールスに引き継ぐタイミングはどこか
これらのポイントを整理したうえで、自社の事業内容に合わせた適切な組織・仕組みを構築する必要があります。
また、インサイドセールスの手法も電話・メールだけでなく、SNSやオンラインでの打ち合わせなど多岐にわたります。
試行錯誤を繰り返し、ターゲットとなる見込み客との関係づくりにおいて最適なアプローチを選ぶことが大切です。
2.信頼関係の構築に時間がかかる
インサイドセールスは広範囲にわたって効率的に営業をかけられる一方、見込み客各社との深い関係づくりは難しい点がデメリットです。
従来の訪問営業であれば、担当者の人柄や誠意が契約につながることもあるでしょう。
しかし、オンラインでのやりとりが主なコミュニケーション手段となるインサイドセールスでは、担当者間の信頼関係構築に時間がかかります。
3.商品・サービスの魅力が伝わりにくい
インサイドセールスでは、対面で商品・サービスについて説明するわけではないため、魅力が伝わりにくいという側面もあります。
対面であれば顧客の疑問点をヒアリングしながら、いかに自社の商品・サービスが貢献できるかを詳しく説明できます。資料や実物を用いて紹介することで、利用後のイメージも伝えやすくなるでしょう。
一方インサイドセールスの場合、例えばメールなどでは簡単な情報しか伝えられず、資料を送ったとしてもじっくり読んでもらえる可能性は低くなります。
オンラインの打ち合わせを企画し、濃い情報を伝えるなど、商品・サービスの魅力をうまく伝えるための工夫が欠かせません。
インサイドセールスで成果を出すためのポイント
インサイドセールスで成果を出すためには、以下4つのポイントを押さえることが大切です。
- 社内組織を再構築する
- 適切なKPIを設定する
- 見込み客の状況を管理する
- 複数のアプローチ手段を設ける
順番に見ていきましょう。
1.社内組織を再構築する
インサイドセールスの導入にあたり、既存の販売組織に部門として組み込むだけではうまく機能しないケースがほとんどです。
リードの獲得を担当するマーケティング部門などとも連動したアクションがとれるよう、社内組織を再構築する必要があります。
各部門がどこまでを担当するのか、明確に線引きしたうえで運用を開始することが大切です。
また、データにもとづく分析・改善が迅速に実行できるよう、顧客管理システムの導入なども検討すべきでしょう。
システムをうまく活用し、マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールスという3つのチームが効果的に連動する体制が理想です。
2.適切なKPIを設定する
インサイドセールスの活動において何を重視するのか、適切なKPIを定めることも大切です。
KPIはKey Performance Indicatorの略で、日本語では「重要業績評価指標」と呼ばれます。業務のパフォーマンスを評価するため、あらかじめ軸となる指標を決め、目標達成までの進捗を管理する手法です。
インサイドセールスにおいては、電話やメール、SNS、オンラインでの打ち合わせといったそれぞれのアプローチ方法の成果を管理することが大切です。各アプローチの実施回数やその後の商談化件数をKPIとして設け、インサイドセールスの効率・効果を高めていく必要があります。
3.見込み客の状況を管理する
インサイドセールスでは、見込み客をステージによって分類・管理することが大切です。
一言で見込み客といっても、「少し興味がある」と「前向きに契約を検討している」では、契約率に大きな違いが生じます。
徐々に成約に近いステージへと引き上げられるようインサイドセールスをかけていくことで、成果につながりやすくなるでしょう。
見込み客を分類する手法としては、営業のフレームワークである「BANT」が挙げられます。BANTは以下4つの要素から成ります。
- Budget:導入予算
- Authority:決裁権限
- Needs:顧客ニーズ
- Timeframe:導入時期
これらの要素をヒアリングすることで、その見込み客がどれくらい成約に近い状態なのかを可視化することが可能です。
4.複数のアプローチ手段を設ける
インサイドセールスでは、ひとつのアプローチだけに頼ることなく、複数のコミュニケーション手段によって多様な角度からコンタクトすることが大切です。
インサイドセールスといいながら、電話やメールだけでの接触に終始してしまうケースは少なくありません。
最終的なゴールは、商談(フィールドセールス)での成約です。ゴールを見据えたうえで、顧客との信頼を構築しながら情報発信を続け、より購入や契約に近い見込み客へと育成を図りましょう。
顧客の信頼を勝ち取るためには、オンラインでの打ち合わせなど、より濃い情報を届けるための取り組みが欠かせません。
まとめ
本記事では、インサイドセールスとは何なのか、概要や導入のメリット・デメリット、成果を上げるためのポイントを紹介しました。
市場競争の激化や新型コロナ感染症の蔓延による訪問営業の機会減少により、インサイドセールスに大きな注目が集まっています。
しかし、リードの獲得を担うマーケティング部門や、見込み客を成約に導くフィールドセールス部門とうまく連携できなければ、インサイドセールスが真価を発揮することはないでしょう。
例えば、マーケティング部門がテーマに沿ったセミナー・ウェビナーを実施することで有力な見込み客を集め、インサイドセールス部門が関係づくり・育成を丁寧に行なえば、フィールドセールス部門による営業活動の効率は劇的に向上します。
インサイドセールスで成果を上げるには、組織全体が連動することが大切です。