
目次
はじめに
スマートフォンで手軽に動画を視聴できるようになり、近年増えているのが動画広告の活用です。動画広告は映像や音声をまじえて商品・サービスの魅力を訴求できるため、従来の広告施策よりも高い効果が期待できるとされています。
本記事では、動画広告が注目されている背景や利用の目的、動画広告の効果が高いとされている理由を解説します。利用時の注意点やコツ、動画広告の種類・媒体などについてもまとめて紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
動画広告が注目されている背景とは
株式会社サイバーエージェントと株式会社デジタルインファクトが合同で実施した調査によると、2022年の国内動画広告市場は前年比133.2%の5,601億円に達しました。動画広告市場は今後も高い成長率を維持し、2026年には2022年の2倍以上の市場規模に到達すると予想されています。
参考:サイバーエージェント、2022年国内動画広告の市場規模を実施
ここでは、動画広告の注目度が高まっている背景について、以下2つのポイントで解説します。
- 動画プラットフォームの浸透
- 通信環境の整備
動画プラットフォームの浸透
動画広告市場が拡大した背景の1つに、動画プラットフォームの浸透が挙げられます。
総務省の「令和3年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によると、動画プラットフォームの代表格といえる「YouTube」の利用率は全体で87.9%、特に10~40代においては90%を超えています。つまり多くの企業にとって、商品・サービスのターゲットとなるユーザーが動画プラットフォームを利用している状態です。
また、YouTubeのような動画プラットフォームでなくても、TwitterやFacebook、Instagram、TikTokなどでも動画形式の投稿が増えており、より動画広告がなじみやすい環境が整っています。
通信環境の整備
従来であれば、高速通信の環境が整った場所でなければ動画再生はできない状況でした。しかし最近では、情報技術の急速な進歩により5GやWi-Fiなどが普及し、動画視聴に適したインターネット環境が整備されました。
スマートフォンやタブレットなどを持っていれば、いつでもどこでも動画の視聴が可能であり、そのぶん動画広告が視聴される機会も増加したといえます。
動画広告を利用する目的
企業が動画広告を利用する主な目的としては、以下の3つが挙げられます。
- 認知拡大
- 販売促進
- ブランディング
順番に見ていきましょう。
認知拡大
動画広告であれば、一瞬で視界から消えてしまうバナー広告などと異なり、映像や音声を通じて目・耳から情報がインプットされます。そのため記憶に残りやすく、認知の拡大につながる可能性が高まります。
新商品やサービスをリリースする際、YouTubeやInstagram、TikTokなど、ユーザーが日常的に使用するSNSや動画プラットフォーム上で繰り返し動画広告を配信すれば、短期間で大きな認知を獲得できるでしょう。
販売促進
動画広告は商品・サービスの特徴や性能、購入によって得られるメリットなどを直感的に伝えられるため、販売促進にも効果的です。テキストや静止画での広告と比較すれば、その訴求力の高さは明白です。
動画を通じて視聴者の興味・関心を刺激し、「実際に手に取りたい」「使ってみたい」といった購買意欲を高める効果があるため、具体的な行動につながりやすくなります。
ブランディング
動画広告は企業や商品、サービスのイメージを向上させる手段としても有効です。
例えば、動画広告を通じて「どのような理念を持って事業を営んでいるのか」「どのように社会に貢献しているのか」などを伝えることで、企業のブランディングにつながります。企業に対するポジティブなイメージが定着すれば、その企業が手がける商品やサービスにも好感を抱いてもらいやすくなります。

動画広告の効果が高いとされる理由
従来の広告よりも効果が高いとされる動画広告ですが、その主な理由は以下の4つです。
- 魅力を伝えやすい
- 印象に残りやすい
- 伝えられる情報量が多い
- 効果検証がしやすい
順番に見ていきましょう。
魅力を伝えやすい
動画広告の効果が高い理由として、まず商品やサービスの魅力を伝えやすいという点が挙げられます。
心理学の研究に基づく「メラビアンの法則」によると、人間は言語・聴覚・視覚という3つの要素から情報を得ています。そして、受け取る情報のうち7%が言語、38%が聴覚、55%が視覚によるとされているのです。
つまり、9割以上の情報は聴覚と視覚を通じて得られることを意味します。テキスト広告で説明するよりも、動画広告で視覚・聴覚を通じて訴求するほうが効果が高いのも納得です。
印象に残りやすい
また、動画広告はユーザーの印象に残りやすいといった点も挙げられます。
SNSや動画プラットフォームでは、同じ動画広告を繰り返し目にすることが多いでしょう。動きや音のある動画広告はもともと印象に残りやすいうえ、繰り返し訴求を受けることでより強く記憶に定着していきます。
たとえ動画広告を視聴した時点で即購入につながらなくても、「○○といえばこのブランド」との認知が定着・拡大すれば、企業や商品・サービスの長期的な成長につながります。
伝えられる情報量が多い
動画広告では、静止画やテキストでの広告よりも伝達される情報量が多くなります。
テキスト広告で商品やサービスの特徴・魅力を表現しようとすれば、何行にもわたって詳しく説明する必要があるでしょう。静止画であればテキストよりは伝えやすいですが、動きがないため限界があります。
動画なら視覚・聴覚の両方を通じて、大量の情報を瞬時に伝えることが可能です。結果、数十秒の広告であっても膨大な情報量を伝えられ、商品やサービスの魅力・特徴をより効果的に訴求できます。
効果検証がしやすい
動画広告であれば、クリック数や再生回数はもちろん、シェア数やいいね数、離脱/スキップされたタイミングなどの詳細なデータが得られます。そのため、効果検証がしやすく、改善のサイクルを回しやすいといったメリットがあります。
期待した成果が出ていない場合、各数値の目標との乖離を検証することで、主な原因を特定することが可能です。改善を繰り返せば、自ずと効果の高い動画広告ができあがります。
動画広告を利用するうえでの注意点
高い効果が期待できる動画広告ですが、利用するうえでは以下のような注意点もあります。
- 手間・コストがかかる
- スキップされる可能性がある
- しつこく感じられることがある
順番に見ていきましょう。
手間・コストがかかる
動画広告の制作には多大な手間とコストがかかります。バナー広告などであれば、静止画を作成してリンクを貼れば準備完了ですが、動画広告の制作には企画や撮影、編集などより多くの労力がかかります。
また、動画広告は1度制作して終わりというわけではなく、効果検証を通じて改善を繰り返す必要があります。動画広告の制作費を検討する際は、検証と改善にかかる手間・コストも含めたうえで予算化すべきだといえるでしょう。
スキップされる可能性がある
SNSや動画プラットフォームで表示される動画広告の多くは、開始してから数秒待てばスキップが可能です。最初の数秒でどれだけユーザーの興味を引けるかが、動画広告の成否を分けるといっても過言ではありません。
せっかく魅力的な動画広告を制作しても、途中でスキップされてしまえば必要な情報を伝えられず、効果を発揮できません。認知拡大や販売促進といった本来の目的につなげるためには、「スキップされないための工夫」が求められます。
しつこく感じられることがある
同じ音楽やセリフの動画広告が何度も流れてくれば、しつこいと感じられてしまうこともあります。特に内容が冗長だったり、不快感を抱かせるような話し方・振る舞いが含まれていたりする場合、ユーザーはストレスを感じてしまうでしょう。
結果として、その動画広告内で訴求している商品・サービスに対するネガティブな印象が定着してしまう恐れがあります。
動画広告の種類と媒体
動画広告にはいくつかの種類があり、それぞれを表示する媒体も異なります。ここでは以下3つの動画広告の種類について、その特徴や使われる媒体を紹介します。
- インストリーム広告(YouTubeなど)
- インリード広告(Twitter・Facebook・Instagram・TikTokなど)
- インバナー広告(Webサイトなど)
インストリーム広告(YouTubeなど)
インストリーム広告は、YouTubeなどの動画配信サイトで表示される動画広告で、動画の開始前や途中、あるいは終了後に配信されます。再生されてから数秒後にスキップできる「スキッパブル広告」と、スキップできない「ノンスキッパブル広告」の2種類があります。
YouTubeは国内外で最大級のユーザー数を誇る動画プラットフォームであるため、幅広い層のユーザーにアプローチ可能です。年齢や性別、居住地など細かくターゲットを絞った配信も可能なため、動画広告の効果も高めやすいでしょう。
また、YouTubeには6秒以内という短さが特徴の「バンパー広告」や、動画内ではなく検索画面や関連動画に表示される「インフィード動画広告」などもあります。目的に応じて最適な広告形態を選びましょう。
インリード広告(Twitter・Facebook・Instagram・TikTokなど)
TwitterやFacebook、Instagram、TikTokなどのSNS上で表示されるのが、インリード広告です。
SNSユーザーがコンテンツをスクロールしながら見ていると、通常の投稿と同じように動画広告が表示・再生されます。周囲に表示されているコンテンツに関連する動画広告を配信できれば、ユーザーはそのまま違和感なく視聴を開始するため、より自然な訴求が可能となります。
SNSによって利用するユーザー層は若干異なるため、自社のターゲットに合うSNSを選ぶことが大切です。また、内容次第ではユーザーによって拡散してもらえる可能性もあるため、爆発的な効果を生み出す場合もあります。
インバナー広告(Webサイトなど)
Yahoo!をはじめとするポータルサイトなどで、コンテンツの周辺に配置された広告枠に表示される動画広告がインバナー広告です。ユーザーがWebページを開いたタイミングで再生されるため、目が留まりやすいといったメリットがあります。
インバナー広告を表示するには、広告主向けのDSP(広告プラットフォーム)を通じて配信設定を行ないます。年齢や性別、居住地などを細かく絞ったターゲティングにより広告効果を高められるほか、予算も細かく調整可能です。
Yahoo!などのポータルサイトに表示されるため、普段は動画配信サイトやSNSを利用しないといった層へのリーチにも効果があります。

動画広告の効果を高めるコツ
動画広告の運用では、以下3つのコツを押さえることでより効果を高められます。
- ターゲットを絞る
- 冒頭2~5秒で興味を引く
- PDCAを繰り返す
順番に見ていきましょう。
ターゲットを絞る
ほとんどの動画広告では、配信対象となるターゲットを細かく指定することが可能です。ユーザーの動画視聴履歴などをもとに、ターゲット層に合致するユーザーに絞って広告を配信することで、広告の効果を高められます。
まず、動画広告を使ってアプローチするターゲットがどのような人物か、対象を明確にしましょう。明確なターゲット像をもとに、配信する媒体や広告の種類、広告の内容を決めることで、より高い効果を引き出せます。
冒頭2~5秒で興味を引く
いかに魅力的な動画広告であっても、ユーザーが「自分には関係がない」と感じれば、すぐにスキップされてしまいます。30秒の広告を作ったとしても、5秒でスキップされていては広告の効果をほとんど発揮できません。最後までしっかり視聴してもらうためには、冒頭の2~5秒の間にどれだけ相手の興味を引けるかがカギとなります。
ターゲット層に刺さるコンテンツは何かを徹底して追求し、瞬時にターゲットユーザーの興味を引くような動画に仕上げる必要があります。
PDCAを繰り返す
動画広告は、一度制作して流すだけで完結するものではありません。広告を掲載して一定期間経過したら、効果検証を必ず行ないましょう。期待した効果が出ていない場合は、クリック率や離脱したタイミングなどを検証し、改善を繰り返すことが大切です。
最初から効果の高い動画広告を制作できる人はいません。広告配信をスタートさせたら、地道にPDCAを回しながら改善を実施し、少しずつ効果を高めていきましょう。
まとめ
本記事では、動画広告が注目されている背景や利用の目的、動画広告の効果が高いとされている理由を解説しました。
TwitterやInstagramなどのSNS、YouTubeなどの動画配信サイトで表示される動画広告は、認知拡大・販売促進・ブランディングといった面で高い効果を発揮します。視覚・聴覚を通じて商品やサービスの魅力を訴求できるため印象に残りやすく、伝えられる情報量が多いのが特徴です。
ただし、既存の広告をただ動画というフォーマットに合わせるだけではうまくいかないでしょう。スキップされないよう冒頭部分でターゲットユーザーの興味を引くとともに、PDCAを回して徐々に効果を高めていくことが大切です。
運用次第で多大な効果をもたらす動画広告の活用に、ぜひチャレンジしてみてください。